子どもの健康の一生を支える「眠育」
子どもの健康の一生を支える「眠育」
子どもが大人になっても健康的に過ごせる「眠育」についてお伝えします。
「睡育」とは睡眠の適切な習慣を、子ども自身が納得して整えられるように導く教育です。
よい睡眠が習慣となれば一生の宝であり、睡眠を「整えなくちゃ」ではなく「整えたい」という気持ちを育むことができます。
子どもの睡眠をパパママがどのようにサポートするのか、しもんさんと一緒に学びましょう!
- 野上 士文(のがみ しもん):上級睡眠健康指導士
- 1983年生まれ・岡山県在住・A型
- 29年間の不眠症を改善
- YouTubeの睡眠動画は累計20万再生以上
- 趣味:ランニング・ジム・温泉・ おいしい食事
- 睡眠サイト「ひつじは眠る。」
- YouTube
- 著書「眠れない理由を知って眠れる方法を知れば安眠。」
あなたは子どもの眠りについて、このように考えていませんか?
- 「8時間でいいのかな?子どもの正しい睡眠時間をよく知らない…」
- 「子どもが睡眠不足になると、どうなるんだろう?」
- 「どんな睡眠習慣がいいんだろう?」
睡眠は子どもの健康だけではなく、発育や学習にも大きな影響があります。
特に発育は大人になって取り戻せないものです。
子どもが自分で睡眠環境を整えることは難しいので、パパママが子どもの睡眠を理解することが大切です。
この記事を最後まで読むと「子どもが健康になる眠育」のポイントが分かります。
子どもの睡眠の6つメリットとは?
睡眠のメリットを知ることはとても大切なことです。
人はデメリットを知ったほうが危機感を覚えて、行動しやすい特徴があります。
しかし、危機感を覚えての行動はストレスがたまりやすく、長続きが難しくなります。
メリットを知ることで、「睡眠を整えなくちゃ」ではなく、「睡眠を整えたい」気持ちがわきやすくなります。子どもにとって睡眠のメリットはたくさんあります。
今回は6つの睡眠のメリットを紹介します。
- 発育が良好になる:健康・運動能力UP
- 集中力がつく:学業UP
- 感情コントロールがしやすい:友だちと仲良く
- 肥満になりにくくなる:健康体
- 適切な食事をとりやすくなる:お菓子が減る
- 幸福度があがる
睡眠を適切にとることで、成長ホルモンをうながすことができます。
成長ホルモンは体を作っていく力があり、子どもの発育だけでなく健康や運動能力も高めます。
身長などの骨格は子どものうちに作られるため、とても大切なことです。
睡眠により、脳を整えることができます。
感情コントロールがしやすくなり、不安や焦りが減るため集中力もあがります。
どちらも、勉強や友だちと仲良くするためには大切な力です。
運動と勉強ができ、感情が安定していれば、学校生活は子どもとって楽しくなりやすいのです。
睡眠により、肥満になりにくくなります。
食欲や代謝に関するホルモン(レプチンやグレリン)が整うからです。
また、ニューカッスル大学のシェ・リン・ユンによる報告では「お菓子などを食べる量が減り、適切な食事をしやすくなる」とも言われており、健康的な食生活にも睡眠は繋がってきます。
子どもの肥満はやや見過ごされることもあります。
親によっては、多少太っていても、子どもは大丈夫だと考えられることがあるためです。
神経質にならなくてもよいのですが、子どもの肥満は健康だけではなく、子どもの自尊心(自分を大切にする感情)にも繋がってきます。
友だちや異性との関わり合いの中で、気にしやすいものの1つだからです。
自尊心を失うと、あらゆるところで意欲がなくなることがあるので注意が必要です。
子どもの体は、本人よりも親やまわりの環境に左右されることが多いので、適切なサポートをしてあげる必要があります。
「子どもだからそんなことは気にしなくてもいい」と軽く考えずに、「子どもではなく、一人の人間として向き合うこと」が大切です。
睡眠をきちんととることは、学校が楽しくなり、イライラが減ることに繋がり、子どもの幸福感そのものがあがってきます。
ただ、子どもが自分一人で睡眠環境を整えることは難しく、睡眠の勉強を一人でしていくのもやや難しいものです。
パパママの知識とサポートが、子どもたちの睡眠のカギと言えます。
子どもの睡眠時間はどのくらい必要か?
年齢ごとの睡眠の推奨時間をまとめると、次のようになります。
睡眠の推奨時間
- 3~5歳:10~13時間
- 小学生:9~11時間
- 中高校生:8~10時間
- 大人:7~9時間
参考:健康・医療・福祉のための「睡眠検定ハンドブック」
よく「8時間睡眠が大切」と言われますが、8時間睡眠は大人の睡眠についての話です。
小学生の場合は、8時間睡眠では足りません。
年齢によって、適切な睡眠時間は変わってくるので注意が必要です。
ちなみに睡眠は個人差があるので、大人であっても8時間睡眠にこだわりすぎないほうがよいです。
睡眠時間を考えるときは、起きる時間から考えると分かりやすいです。
例えば、子どもが7時に起きるため、10時間寝るのであれば21時に就寝となります。
…が、実は違います。
大切なこととしては、人はベッドについたからといって一瞬で眠れるわけではない、ということです。
もし、10時間の睡眠をとりたい場合はプラス15~30分と考えたほうがよいです。
「7時に起きる場合は、20時45分ぐらいにはベッドに横になる」ということですね。
中学生から部活の朝練や勉強時間の影響で、夜更かし習慣がつきやすいことがあり、社会的なリズムと子どもの睡眠リズムにズレが生まれてしまう問題があります。
子どもが適切な睡眠時間を守れるように、サポートしてあげることは親ができる大切なことの1つです。
子どもの睡眠不足のデメリット
睡眠不足のデメリットとは、メリットの裏返しですね。
- 発育が悪くなる(大人になって取り戻せない)
- 集中しにくくなる
- 感情が不安定になる
- 肥満になりやすくなる
- お菓子やジャンクフードを食べやすくなる
- 幸福度が下がる
実際に、子どもたちが睡眠不足なるとどうなるかを見ていきましょう。
小学2年生3844人を対象にしたアンケートです。
Aグループ
- 夜9時以降に就寝
- 9時間未満の睡眠時間
- たまに朝食を抜く
→イライラや眠気があり、学校が楽しくない:58%
Bグループ
- 夜9時までに就寝
- 9時間以上の睡眠時間
- 毎朝、朝食をたべる
→イライラや眠気なく、学校が楽しい:94%
やはり、規則正しい生活をしていると、学校が楽しくなる可能性があります。
思った以上に、大きな差が生まれています。
睡眠時間だけではなく、朝食を食べているかどうかも追加されています。
朝食は睡眠リズムの体内時計調整に役立つものだからです。
3~5歳まで睡眠が整えっていない子ども
- 三角形の模写ができないリスクが5.9倍
- 三角形の模写ができない5歳児の多くが夜型・生活不規則
夜型・生活不規則による悪影響ですね。
睡眠不足とは言い切れないまでも、夜型であり生活不規則であれば睡眠の質は悪くなっていると思われます。
脳や体の発育が速い時期の発育不良は、防いであげたいですね。
家庭の中でのコントロールが難しい場合は、公共機関などでどのような生活のサポートがあるのか聞いてみる、家族や友だちなどを頼ることが大切です。
脳や体の発育は、一生を左右する問題になる可能性があるからです。
中学生の不登校12万人(平成30年)の原因
- 友人関係52.9%
- 生活リズム34.2%
- 勉強がわからない31.2%
- インターネットやゲームの影響15.3%
実はすべて睡眠が影響している可能性があります。
友人関係は、睡眠不足の感情の不安定さ、健康悪化から…
生活リズムは、睡眠リズムそのものが崩れることから…
勉強は、睡眠不足の集中力や脳の発育から…
インターネットやゲームの影響は、睡眠不足の感情不安定さから…
これら4つの睡眠に関する悪影響は、パパママが防ぐことができるところも大きいです。
発育だけではなく、学業や友だち関係を子どものころに築く力は一生使える力でもあります。
やはり、子どものころに「自分は勉強ができない」「友だちを作ることができない」と本人が思い込んでしまうと、何かきっかけがない限り、多くの可能性をなくしてしまう結果になります。
子どもの眠育
子どもの睡眠で大切なのは、子ども自身が睡眠を整えようとしても限界があることです。
子ども本人で、食事時間、テレビや家族の時間、パジャマや布団の寝具、夜の騒音や光などの管理を行うことは難しい家庭が多いと思います。
特に子どもの特徴として「未来につながる健康を軽くとらえてしまう」ことがあります。
あなたも年齢を重ねてきてから健康のことを考え始めませんでしたか?
子どもによって健康にはまだ問題が起きておらず、成長をし続ける子どもたちは「取り戻せる・なんとなかなる」感覚を強く持っているためです。
とはいえ、健康の大切さをきちんと理解することは大人も難しいです。
多くの人は、失ってから気づくことが多いです。
だからこそ、子ども本人だけではなくパパママのサポートが必要になります。
不思議なもので、大人も自分の健康のことは失うまで大切さに気付かないことが多くても、他人に対しては「健康的なほうがいい」と思いやすいのです。
これは、他人のことは客観的に見えるので、より良い方向が見えやすいからです。
子どもの睡眠のためにサポートしてあげたいことは、大きく分けて3つあります。
睡眠環境を整える
- 光と音を抑える(子どもは大人より光の影響を強く受ける)
- パジャマや寝具をきちんと用意する(洗ってあげる・着替える習慣をつける)
- 親と布団を分ける(寝付くまではOKです)
親が睡眠リズムを整えてあげる
- ご飯の時間と就寝と起床の時間をほぼ一定にする
- 子ども睡眠リズムと親の睡眠リズムをきちんと分ける
- 夜は、テレビやゲームなど刺激的なものを減らすように習慣づける
※子どもはカフェインの分解する力が弱いので注意です。
睡眠習慣をつけてあげる
①ベッドルール
- 睡眠以外にベッドを使用しない
- 30分以上眠れない時はベッドから出る
- 昼寝・仮眠をする時は(夜の)ベッドを使わない
※夜の睡眠を高めたい場合は昼寝・仮眠を止める - 休むためにベッドを使わない
- ベッドを使う時間を固定していく
②起床時間は固定:
平日と休日の起床時間を固定し、「早起き早寝」がおすすめです。
睡眠リズムをつけるためと、社会的な時差ボケを起こさないためです。
社会的な時差ボケとは…
- メンタル悪化
- 心疾患リスク
- 学業の低下
※時差ボケ修正に時間がかかる
③ベッドメイキング
ベッドや布団を自分で整える
- 朝のポジティブな感情につながる
- 仕事が楽しく感じる
- セルフコントロールが身につく
- 誠実性が身につく
- 睡眠の質があがる
眠育まとめ
- 子どもの推奨睡眠時間は9~11時間
- 睡眠は子どもの一生を左右する
- 人間関係、勉強、健康、幸福度があがる
- 親が睡眠環境を整え、睡眠習慣を身につけさせてあげる
- 子どもの睡眠理解を深める